「免震住宅」は大地震が発生しても倒壊することの無い住宅ですが、非常に高額であるため、なかなか採用されることがありません。他方、「基礎下減震システム」とは、震度7の大地震が発生したときでも、住宅の揺れは震度5強以下に抑えてしまうシステムで、「免震住宅」のような機能でありながら、比較的低コストで採用できるシステムとなっています。
震度5強は住宅が何回か経験することのある地震です。この地震が発生しても住宅が倒壊しないよう建築基準法において定められていますので、この「基礎下減震システム」を採用した住宅は、あたかも大地震を通常の地震のようにしてしまうため、倒壊することがありません。
2010年に初めて技術審査証明書を取得し、これまでに3回更新手続きをしています。2015年の第1回目の更新は、実際に基礎下減震システムを採用した住宅の初期摩擦係数と5年経過後の摩擦係数との比較を行いました。結果として、多少の誤差があるものの、地盤の地震加速度が250ガル未満で滑り性能が維持されることが確認出来、無事に更新することができました。
2020年の第2回目更新は、6つの滑り材試験体を1セット用意し、木造2階建て相当の荷重を負荷し続けて、初期摩擦係数と5年経過後の摩擦係数との比較を行いました。結果として、多少の誤差があったものの、滑り材試験体が固着することなく正常な摩擦係数が確認できたことにより問題なく更新することができました。
2025年の第3回更新においても、前回使用した6つの滑り材試験体1セットを用いて、初期摩擦係数と5年経過後並びに10年経過後の摩擦係数との比較を行いました。結果として、6つのうち1つの滑り材試験体が初回計測において、地盤の地震加速度300ガル付近で滑り性能が確認されたものの、2回目計測や3回目計測においては地震加速度250ガル未満に収まっていました。これは滑り材試験体が固着したものでは無く、滑り材試験体に折り目が付いていたことから、試験体の保管状況の影響であったと考察しました。他の5つの滑り材試験体も固着することなく初回計測から良い性能を維持していたことから更新することができました。
次回は2030年の第4回更新になりますが、こちらも同様に初期摩擦係数と5・10・15年経過後の摩擦係数と比較する予定です。これまでの試験結果から、次回の更新でも滑り材試験体が固着することなく、滑り性能を維持する結果になるであろうと想像しています。
「免震住宅」が高額であることから開発が始まった「基礎下減震システム」。日本は世界有数の地震大国です。大地震を経験する度に建築基準法が改定され、より強固な住宅の建築へと向かっています。しかし、地震力に対して住宅強度を上げて対応するのには限界があり、またコストのかかる話です。「柳に風」のように、大きな地震力があっても、その力を受け流せることも一つの対策方法であると信じます。
