不同沈下とは?建物・健康への影響と原因・対策を解説

不同沈下とは、建物が一方向に沈んでしまうことを指します。発生すると建物だけでなく人体にも影響を及ぼし、日常生活にも支障をきたしかねません。本記事では、不同沈下の原因やさまざまな影響などについて詳しく解説しています。

戸建ての住宅やマンション、ビルなど建物を所有する際に注意しなければならない要因のひとつに「不同沈下」があります。不同沈下が起こると、建物の不具合だけでなく日常生活にも影響がでます。
本記事では、不同沈下が起こる原因や影響、主な対策について解説します。新しく住宅やマンションなどを購入する方は、不同沈下を起こさないための対策を把握しましょう。

不同沈下とは 
不同沈下とは、建物や構造物が均一に沈まず、一部分だけが沈んでしまう現象のことです。似た言葉に「不等沈下」がありますが、同じ意味合いで使用されることが一般的です。 一部の地盤が弱い関係で不揃いに沈下してしまい、結果として建物が傾いてしまいます。
基本的に建物は水平に建てることが前提となっているため、建物の内部や人体にも悪影響を及ぼししまう事があります。

不同沈下が起きる主な原因 
不同沈下が起こる原因は軟弱地盤である点が前提ですが、そのほかに以下のような原因で発生するケースがあります。
・盛土や切土
・瓦礫やガラなどの埋設物
・地層の傾斜
・雨水や地下水
・建物の荷重の偏り
ここでは、上記で挙げた原因について詳しく解説します。

盛土や切土 
盛土とは、斜面や谷に土を盛って地面を平らにすることを指し、切土は山や丘などの斜面を削って土地を平らにすることを指します。切土は元々地盤が固いケースがほとんどですが、盛土は切土よりも地盤は弱いです。
盛土は新たに造成された地盤であり、工事用の重機で十分に締め固まらない可能性があります。また、盛土に使われる材料の品質や施工の良し悪しによっても強度が大きく左右されます。
ひとつの土地に盛土と切土が混在している場合、建物の重みによって盛土を入れた部分が沈んでしまうおそれがあります。また、沈む大きさによっては建物に強い衝撃が加わり、基礎にひび割れが発生する可能性もあります。

瓦礫やガラなどの埋設物
盛土のなかに瓦礫やガラ、木の根、廃材といった埋設物が含まれていると、不同沈下が発生するリスクがあります。これらの埋設物が時間の経過とともに腐食・分解することで体積が減少し、土中に空洞が生じます。その空間に雨水や土砂が流れ込むことで、地盤が局所的に緩み、建物の荷重によって沈下が引き起こされます。

さらに、地盤調査の際に硬いガラにあたると、一見良好な地盤と誤認してしまう恐れがある点にも注意が必要です。

地層の傾斜
地層が水平ではなく傾斜している場合、地盤の支持力にばらつきが生じるため、不同沈下の原因となることがあります。とくに注意が必要なのは、傾斜した「硬質層(支持層)」の上に、厚みの異なる「軟弱層」が覆いかぶさっているケースです。
軟弱層の厚さが場所によって変化することで、地盤沈下の程度にも差が生じ、建物に傾きや歪みが発生しやすくなります。
た、軟弱層の途中に硬質層が挟まれている場合も、支持力の不均一さから不同沈下を引き起こすリスクが高まります。

雨水や地下水
地盤自体に大きな問題がなくても、雨水や地下水の影響によって不同沈下が生じる場合があります。たとえば、雨水が地中に浸透すると、土粒子が移動して地盤の体積が減少する「水浸沈下」が発生します。
粘土質の地盤は水分を吸収すると膨張しますが、地下水の汲み上げや排水工事などで地中の水分量が低下すると、逆に収縮が起こり、地盤全体が沈下します。こうした水位の変化が一様でない場合、地盤の沈下も不均一となり、不同沈下が引き起こされるのです。
また、雨水や地下水が地中に浸透すると土が流れやすい方向に動いてしまい、その結果土が失われた部分で不同沈下が発生するケースもあります。

建物の荷重の偏り
軟弱地盤でなくても、建物の荷重が不均等にかかることで不同沈下が発生する可能性があります。たとえば、一部が鉄筋コンクリート構造になっている、特定の部屋に重量物や大型家具が集中しているといったケースでは、地盤への荷重が偏りやすくなります。
このような偏荷重は地盤への圧力に差を生じさせ、結果的に建物の一部だけが沈下するリスクを高めます。また、多くの場合は荷重の偏りに加え、地盤の性質や施工方法など複数の要因が複雑に絡み合って不同沈下が起こる点にも注意が必要です。

不同沈下によって発生し得る問題
通常、建物は水平に建てられているため、不同沈下が発生すると建物や人体にさまざまな影響を及ぼします。ここでは、不同沈下によって想定される建物と人体への影響について解説します。

建物への影響
不同沈下によって建物が傾くと、構造材の一部に荷重が集中し、さまざまな不具合が生じます。代表的な例としては、ドアや窓の開閉がスムーズに行えなくなる、鍵がかかりにくくなるといった生活上の支障が挙げられます。

このように不同沈下は、日々の暮らしに影響することがあるため、早期の調査・対策が不可欠です。

人体への影響
傾いた建物で生活を続けると、人体にもさまざまな悪影響が現れる可能性があります。人は無意識に地面と垂直になるよう姿勢を保とうとするため、建物が傾いていると平衡感覚が乱れ、めまい・頭痛・吐き気といった身体的不調を引き起こすことがあります。
傾きの程度が大きくなるほど、こうした症状も強まり、日常生活に支障をきたすこともあります。

また「家が倒壊するのではないか」という不安感が慢性的なストレスにつながり、壁のひび割れや床の軋みといった些細な異変にも過敏になるなど、精神的な影響も無視できません。身体的・心理的な負担を軽減するためにも、傾きが確認された場合は早急な対応が求められます。

 【補足】人間が気付く傾きは何度ぐらい?角度と健康被害の関係
建物が傾いた場合の影響は、以下の表のように傾きの角度によって異なります。

傾きの角度

健康被害

5/1000(0.29°) 傾斜を感じる
6/1000(0.34°) 不同沈下を意識する
8/1000(0.46°) 傾きに対する強い意識、苦情の多発
10/1000(0.6°) めまいや頭痛が生じて修正工事を行わざるを得ない

出典:日本建築学会「6.建物の傾きによる健康被害」(http://news-sv.aij.or.jp/shien/s2/ekijouka/health/index.html)

傾きの角度が大きくなるほど違和感や体調不良といった症状が強くなる傾向にあります。万が一建物が傾いていると感じる場合は、専門業者へ調査を依頼してみましょう。

不同沈下を起こさないための対策方法
不同沈下を防ぐには、地盤の状態を正確に把握し、適切な設計・施工を行うことが不可欠で、地盤に関する専門的な知識と事前調査が重要となります。対策としては、以下のような取り組みが効果的です。

・地盤に均一に荷重がかかるよう設計する
・強度のある地盤まで対策工事を行う

上記の対策を参考に、不同沈下のリスク軽減に努めましょう。

地盤に均一に荷重がかかるよう設計する
不同沈下の主な原因のひとつは、建物の荷重が地盤に対して不均等にかかることです。このリスクを抑えるためには、地盤全体に荷重が分散されるような設計が重要です。
その対策として効果的なのが「ベタ基礎」の採用です。ベタ基礎とは、建物の床下全体に鉄筋コンクリートを一体的に打設する構造で、建物全体の荷重を地盤に均等に伝えることができます。
従来の布基礎では柱の下など特定の箇所に荷重が集中しやすく、局所的な沈下を招くリスクがありました。ベタ基礎を採用することで、荷重の偏りを抑え、不同沈下の発生リスクを軽減することが可能になります。

強度のある地盤まで対策工事を行う
不同沈下を抑えて建物を安定化させるには、強度の高い地盤まで対策工事を行うことが有効です。対策のひとつに「杭基礎」と呼ばれるものがあり、地下の硬い地盤まで杭を打ち込んで建物を支えます。軟弱地盤の影響を受けないため、高層ビルや大型の建築物などに採用されています。
そのほか、軟弱層が薄い土地や盛土・切土の境界などに地中深くに基礎を設ける「深基礎」と呼ばれる方法も有効です。

まとめ
不同沈下とは、建物や構造物の一部だけが不均等に沈下してしまう現象を指します。これは、地盤の一部が他よりも弱かったり、造成された地盤などで発生しやすくなります。
不同沈下は建物そのものへの被害だけでなく、居住者の健康にも悪影響を及ぼします。傾斜が進むと平衡感覚が乱れ、めまい・吐き気・頭痛といった症状を引き起こすこともあります。こうしたリスクを未然に防ぐには、荷重を地盤全体に均等に分散させる設計や、支持力の高い地層まで基礎を到達させるか対策工事を実施するなどの対策が欠かせません。

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