敷地調査とは、家を建てる前に土地の面積・法規制・周辺環境を調べる初期調査です。怠ると建築許可が下りなかったり想定外の追加費用が発生したりするおそれがあります。確認項目や地盤調査との違い、依頼先まで詳しく解説します。
家を建てるために土地を購入したら、最初に行うべきが「敷地調査」です。
しかし「具体的にどんな内容を調べるのか」「地盤調査との違いは?」「いつ、どこに依頼すればよいのか」と疑問に思う方も少なくないでしょう。
敷地調査を怠ると、建築後に想定外の追加費用がかかったり、理想の間取りが実現できなかったりするおそれがあります。
この記事では、敷地調査の目的や確認項目、地盤調査との違いや依頼先までを分かりやすく解説します。安心して家づくりを進めるための参考にしてください。
敷地調査とは
敷地調査とは、家を建てる前に土地の状態や法律上の規制、周辺環境を確認する大切な初期調査です。測量によって正確な面積や形状を把握し、建築基準法や都市計画法といった法律の制限もチェックします。
調査によって「どんな家が建てられるか」「どんな制限があるか」が分かります。登記簿の境界と実際の境界が一致しているかを確認し、上下水道・ガス・電気などライフラインの整備状況も調べます。
敷地調査は、安全性・快適性を確保するための基盤となる作業です。省略すれば、建築許可の不認可、予期せぬ追加工事、さらには境界トラブルといった重大な問題につながりかねません。
敷地調査で確認する主な項目
敷地調査では、土地の物理的な状況から法的規制まで、幅広い項目を確認します。それぞれの項目が家づくりにどう影響するのか、詳しく見ていきましょう。
土地の現況
土地の現況を調べることは、正確な設計と将来のトラブル防止のために欠かせません。主な確認項目は次のとおりです。
・測量による面積と形状の確認
正確な測量を行い、土地の面積や形状を把握します。
登記簿の情報が古い場合、実際の状況と食い違うことがあり、そのままでは正しい設計図を作れません。
・境界の明確化
隣地との境界杭の有無を確認します。
境界が不明瞭な場合は、隣地の所有者の立ち会いのもとで境界を確定させます。これを怠ると、将来的な近隣トラブルの原因となります。
・既存物の有無と撤去の必要性
古い建物や塀、井戸、樹木などがあるかを調査します。
撤去や伐採が必要な場合は、その費用や工期への影響も考慮する必要があります。
・隣家との距離(民法第234条)
民法では、隣家との建物の距離を境界から50cm以上離すよう定められています。このルールも事前に確認しておきましょう。
こうした調査をきちんと行うことで、安心して家づくりを進められます。
出典:e-Gov法令検索「民法」
法的規制
家を建てる土地には、多くの法律上の制限があります。とくに確認すべきポイントは次のとおりです。
・用途地域(都市計画法第8条第1項第1号)
土地の利用目的を13種類に分類したものです。住宅が建てられるのは工業専用地域を除く12種類ですが、同じ住宅用地域でも条件が異なります。
・地目(不動産登記規則第99条)
登記上の土地の用途を示す区分のことです。地目が「田」や「畑」の場合は農地転用の手続きが必要です。許可が下りないと住宅は建てられません。
・建ぺい率と容積率(建築基準法第53条・第52条)
・建ぺい率:敷地面積に対する建築面積の上限
・容積率:敷地面積に対する延べ床面積の上限
この制限によって家の大きさが決まります。
・高さに関する制限
・絶対高さ制限(建築基準法第55条):第一種・第二種低層住居専用地域では10m又は12mまで
・斜線制限(同法第56条):道路・隣地・北側に面する建物の高さを制限
・日影規制(同法第56条の2):周囲の家への日照を確保するための制限
・その他の地域指定
防火指定・高度地区・風致地区などに指定されている場合は、建物の外観やデザインにも追加の規制があります。
出典:e-Gov法令検索「都市計画法」
出典:e-Gov法令検索「不動産登記規則」
出典:e-Gov法令検索「建築基準法」
敷地の高低差や道路幅
土地と道路、隣地との高低差は、家の設計や工事費に大きく関わります。とくに次の点を確認することが重要です。
・高低差と擁壁
高低差がある土地では、斜面の土砂崩れを防ぐために擁壁の設置が必要になる場合があります。
既存の擁壁がある場合も安心はできません。水抜き穴の有無や構造の安全性を必ずチェックします。
・がけ条例と法令の確認
建築基準法第19条第4項では、一定の高さや角度をもつがけの近くに建物を建てる場合、安全対策を求めています。
自治体ごとに独自の「がけ条例」を設けている地域もあるため、事前の確認が欠かせません。
・道路幅員と接道義務
建築基準法第43条では、建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。これを満たさない土地では建築許可が下りない可能性があります。
・セットバックの有無
前面道路の幅員が4m未満の場合、建築基準法第42条第2項にもとづき、道路の中心線から2m後退した位置まで敷地を下げる「セットバック」が必要です。
セットバック部分は建築面積に含められないため、建てられる家の大きさが制限されます。
・工事車両の搬入可否
道路の幅や敷地との高低差は、重機や工事車両の搬入にも影響します。搬入が難しい場合は別途費用がかかることもあります。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法」
周辺環境
快適な暮らしを実現するには、敷地そのものだけでなく周辺環境の調査も欠かせません。とくに次の項目を重点的に確認します。
・ライフラインの整備状況
上下水道、ガス、電気、電話線などが引き込まれているかを確認します。
とくに上水道は本管の口径が重要です。口径が小さいと水圧が不足し、シャワーの勢いが弱くなるなど日常生活に支障が出る可能性があります。
・隣家との位置関係
隣家の窓や換気扇の位置をチェックします。窓の位置が重なるとプライバシーが確保しにくく、換気扇の近くでは臭いや音の問題が起こることもあります。
・日当たりと風通し
方位や周囲の建物の高さ、植栽の有無を調べ、どの時間帯にどれくらい日が差すか、風の流れはどうかを把握します。間取りや窓の位置を決めるうえで欠かせない情報です。
・周辺施設と交通状況
学校、病院、商業施設、公園などの距離やアクセスを確認します。
道路の交通量や騒音レベルも、暮らしやすさや子育ての安心感に大きく影響します。
敷地調査と地盤調査の違い
敷地調査は土地の形や面積、法規制、ライフラインなど表面の条件を調べます。どんな家が建てられるかを確認するための調査です。
地盤調査は地中の強さを調べ、建物の重さに耐えられるか、沈下の危険がないかを判断します。2000年の建築基準法改正で義務化されました。
敷地は「表面とルール」、地盤は「中身」です。この両方の調査がそろってこそ、安全な家づくりができます。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法」
地盤調査で分かること
地盤調査では、地盤の強度や支持力、沈下のリスクが分かります。後背湿地や旧河道、埋立地など、土地の履歴も重要な判断材料です。
これらの結果をもとに、適切な基礎の種類や地盤改良工事の要否を決定します。
敷地調査はいつ・どこに依頼する?
敷地調査の適切なタイミングと依頼先を知ることで、スムーズな家づくりが可能になります。
敷地調査を行うタイミング
敷地調査は、理想の土地が見つかったら、できるだけ早い段階で行うことをおすすめします。土地を購入する前に調査を行えば、その土地に希望する家が建てられるかどうかを事前に確認できます。
また、敷地調査によって追加工事の必要性が分かれば、総予算を正確に見積もることができます。すでに土地を購入済みの場合でも、建築計画を立てる前に必ず敷地調査を実施しましょう。
敷地調査の依頼先
敷地調査は、建築を依頼する予定のハウスメーカーや工務店、又は測量会社に依頼するのが一般的です。
まとめ
敷地調査は、安全で快適な住まいづくりを始めるための大切な第一歩です。土地の状態や法的規制、高低差、道路幅員、周辺環境などを確認することで、その土地に合った最適な建築計画を立てることができます。
また、地盤調査との違いを理解し、適切なタイミングでそれぞれの調査を行うことも重要です。早めに実施することで、建築不可といったリスクや想定外の追加費用を避け、安心して理想の家づくりを進められます。
ビイックは、住宅向け地盤調査専門会社です。表面波探査法の技術開発元として創業50年の実績を持ち、年間5,000棟以上の地盤調査を実施しています。正確な調査により、他の地盤調査方法よりも無駄な地盤改良工事を無くすことでお客様の負担を減らし、最適な対策をご提案します。
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