学会

内水氾濫と河川氾濫(外水氾濫)

内水氾濫とは、市街地や農地に降った大量の雨水が下水道や水路に流れ込み、あふれ出す現象。2018年の西日本豪雨では19道府県の約1万5000戸、東日本を襲った2019年の台風19号では15都県の約3万戸が内水氾濫の浸水被害を受けました。

一方、河川氾濫(外水氾濫ともいう)とは、言葉通り河川からの堤防越水などで周辺が浸水することを言います。

2020年7月4日朝、熊本県人吉市では市中心部を流れる1級河川・球磨川が氾濫しました。全世帯の約5分の1に相当する約3000世帯が浸水し、溺死などで21名が亡くなりました。

この際に生じたのが今回のテーマである内水氾濫+河川氾濫です。

内水氾濫で生じた洪水によって、午前2時から3時頃には、浸水深さは大人が歩行困難となる目安の70cmを超え、避難ができなくなりました。

そして、午前6時頃に球磨川本流が氾濫し、さらなる水が押し寄せて被害が拡大したとみられています(下図参照)。

*上図は防災ニッポンのサイトから引用させていただきました。

この内水氾濫ですが、先日発生した秋田での大雨時にも確認されています。

また、河川の氾濫情報等は随時公表されますが、内水氾濫については部分的なものが多く、発生しても把握しきれないのが現状で、SNSなどに投稿される冠水情報などを見たり、自分で自宅周辺を確認する必要があります。

繰り返しますが、内水氾濫が生じて周囲が冠水した後、河川氾濫が発生すると一気に水位が上昇する可能性があります。冠水が1mあって、河川氾濫で3m増水すると計4mとなり、垂直避難で2階に上がっても十分な避難であるとは言えなくなります。高台ないしは避難所に指定されている場所への避難を実施してください。

上の図は、参考資料として埼玉県草加市のハザードマップ中に記載のある内水氾濫履歴を記載したものです。

埼玉県草加市という場所にはほとんど高低差(最大で4~5m程度、急な傾斜地はなし)がないのですが、河川氾濫時の最大浸水深さは市内のほとんどの場所で0.5~3m未満とされています。

過去、埼玉県草加市で内水氾濫に至った地域は一部のみです(上図参照)。

ただ、平地である分、ゲリラ豪雨などによって短時間に大量の降雨が発生した場合、より広い範囲で内水氾濫が発生し、市内の道路が通行不能になった状況で、周辺部にある河川が複数、同時に氾濫する可能性があり、内水氾濫に加えて新たに発生した河川氾濫によって、短時間に浸水深さが増す可能性があります。

このような現象が発生する可能性があるのは、事例として用いた埼玉県草加市に限ったことではありません。近隣に氾濫の恐れがある河川が存在する、すべての場所で考慮する必要があるため、対応策を検討する必要があります。

梅雨は明けましたが、本格的な台風シーズンはこれからであり、ゲリラ豪雨や線状降水帯の発生もこれからありうることだと思います。

内水氾濫については自動車の通行止め情報が自治体から発表されたり、ご自身の目で周辺を見ることでもわかりますので、十分なご注意をお願いいたします。そして、危ないと感じたら身を守るための早めの対応を実施することで、球磨川で生じたような被害が二度と生じないように、ご協力をよろしくお願いいたします。

*本資料のもとになった記事

https://www.bosai.yomiuri.co.jp/biz/article/10496?paged=2&fbclid=IwAR3ipyB8elaavl2R8OjvtN-pnH0GyyXQOCCmh39TzF2PLWGUboVTkVbJCvA

 

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